アジテーター
何というツマラナイ世界! これを悪夢と言わずして なんと言おうか♪
元は思慮深く礼儀正しい貴族の紳士だったが、絶望によって狂気の姿へと成り果てた存在。紳士は、貴族たるもの社会をより良くすることが義務であると幼い頃から周囲に教えられ、やりたいことや夢を持つことを許されずに、親の敷いたレールの上を進んでいった。持ち前の性格の良さもあり、自身の使命を全うするために身を粉にして働きながらも、手にした財を貧しい人々の支援にあてるなど、精力的に活動をした結果、紳士は誰しもから称賛される有名な貴族となった。そんなあるとき、稀に見る飢饉が国を襲い、貧しい者たちが路上で息絶えていく事態になってしまう。さらに追い打ちをかけるように、朽ちた死体から発生した新型の流行り病も瞬く間に蔓延し、平和だった国は見る影もなく死に満ちた国となってしまった。紳士は人々を救うために尽力するが、一人の人間ができることには限界があり、救いたい人々は手のひらから砂がこぼれ落ちるように次々と命を落としていく。なんとかしようと死にもの狂いになるも結果が出せない紳士のことを、いつしか国中の人々が「何もできない無能の貴族」だと罵り始める。さらには、身内までもが膨大な私財を投げ売ってしまった紳士の行いを非難し、彼は完全に孤立してしまう。多大な心労から若いながらも真っ白な髪になってしまった己の姿を鏡で見て、自分はいったいなんのために存在しているのだろうかと絶望した紳士だったが、そんな折、彼を流行り病が襲う。激しく咳込み、口から血を流しながら、大きく狂気的に笑い始める紳士。「こんな世界のためにずっと自分を殺して生きてきた。なんて馬鹿らしい!思うがままに自由に生きるべきだった!」絶叫にも似たそんな言葉と共に、彼の姿は異形なる者へと変貌を遂げたのだった。
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