目醒めし正義の大天使 カマエル

かかってきな！ あんたの迷い、 私の正義＜こぶし＞で 吹き飛ばしてやる！

ストライク・ワールドにある、とある世界。モリアという神を自称する者が、あるときマスターオーブを手にして強大な力を獲得してしまう。 モリアは「痴愚神モリア」として世界に君臨し、人々を堕落させ世界を滅亡へと導いていく。モリアの脅威を察知した天界は、カマエル、ラミエル、ザドキエル、サンダルフォン、メタトロンの五人の天使を招集し、マスターオーブの回収へと向かわせた。 しかし、五人の出動を事前に察知していたモリアは、彼女たちに罠を仕掛ける。それは、モリアが作り出した「痴愚の夢」という世界に相手を捕縛し、自分の願いがすべて叶うその理想世界に囚えることで戦う気力を奪うというものだった。 ザドキエルを除く四人の天使たちはモリアの策略にはまり、次々と痴愚の夢に囚われてしまう。カマエルは、モリアに過去の幻影を見せられていた。それは彼女が訓練生だった時代、真面目に訓練を行わない仲間に苛立ち、強く叱責してしまったことで仲間たちとの間に溝ができ、孤立するようになってしまったという記憶の幻影だった。 するとモリアは、志や使命から解放されて自由に生き、平穏な日常を楽しむことができる世界をカマエルに提供する。そしてモリアはカマエルに「どんなに正しいことだと信じていても正義を押し付けるような生き方は疲れるでしょう？この世界なら正義も悪もない。正義を守るためにあなたが疲弊する必要はない。この世界こそあなたが理想とする世界だ」と囁きかける。カマエルはモリアの誘惑によって、厳しい訓練などなく誰もがのびのびと生きることができ、誰とも戦わず誰も傷つかない安寧の世界に浸ってしまう。 しかしあるとき、夢の世界に一匹の犬が現れる。犬はカマエルの家を汚したりお気に入りの家具を壊したりと、彼女が暮らす安寧の世界を破壊しようとする。怒って犬を追い払うカマエルだが、その怒りが引き金となって過去の痛みが呼び覚まされてしまう。なぜあの犬は自分を放っておいてくれないのかと、困惑と混乱に陥りながら家の中を片付けるカマエルだったが、ふと片付けの最中に、ひとつのボクシンググローブを発見する。 争いのない世界であるはずのこの場所で争いのための道具が見つかったことに戸惑うカマエル。するとそこに再び犬が現れ、グローブに噛みつこうとする。咄嗟にグローブを守り激怒するカマエルだったが、その瞬間、武器を持って仲間を守ったことや、尊敬する天使の先輩たちの姿がフラッシュバックする。 正義感が強い自分を褒めてくれ、そのまま正義を貫く心を持って使命を果たすように励ましてくれた先輩の存在があったからこそ自分は迷わずここまでこれたのに、なぜ先輩のことを忘れてしまっていたのか。カマエルは、グローブが自分にとってとても大切なものであること、そして自分が果たすべき使命をはっきりと思い出した。 同時にカマエルは、犬の正体がザドキエルであり、自分を目覚めさせるためにこの世界にやってきたのだということを悟る。カマエルはザドキエルに感謝の意と共に、一緒に痴愚の夢の世界を脱出する準備ができたことを伝えた。 そして迎えたモリアとの決戦の時、ザドキエルが放り投げた四つの宝石の眩い輝きに呼応して痴愚の夢に封印されていた四人の天使たち――カマエル、ラミエル、サンダルフォン、メタトロンが目を覚ました。それぞれが成長を遂げ、揺るぎない使命を胸に再集結を遂げた五人の天使たちは、力を合わせ、モリアに立ち向かうのだった。