セレボラ

必ず救うと誓ったのに… 君を死なせてしまった… 約束など無意味…
その物語の主人公は、鉱夫を生業とする一家に生まれた一人息子だった。 決して裕福ではない家庭だったが両親から惜しみない愛情を受けてまっすぐに育ったその少年は、あるとき、母親と共に出かけた街で一人の少女と出会う。周りの子どもたちからいじめを受けていたその少女を少年は助け、優しく手を差し伸べた。 領主の娘であった少女と少年は家柄も身分も違ったが、少年は辛いことがあったら自分が必ず助けに行くと宣言し、笑顔で少女と指切りをして約束を交わす。それから少年は父の仕事の手伝いの合間を縫って少女と会い、互いの仲を深めていった。 しかし、あるとき、鉱山の利権を巡って領主と鉱夫たちとの間で諍いが勃発する。領主の横暴な契約と度重なる契約違反に怒った鉱夫たちはついに暴動を起こし、あの少女を含む領主の家族を人質として囚えてしまう。 当然、少年は鉱夫たちのリーダーである父に制止を求めたが、あくまでこれは脅しであり権利を守るために必要なことなのだと諭す父を信じて、少年は父と約束の指切りを交わす。 だが、それからわずか数日後、領主の家族を幽閉していた鉱山が崩落し、あろうことか坑内ガスが発生してしまう。地獄と化した鉱山では救助を求める声が飛び交い、鉱夫たちは必死に掘り進めたが、崩れた岩盤と充満したガスはもはや手の施しようがなかった。 少年は、少女を助けるという約束を守るため、父の制止を振り切って坑道へ駆け込んだが時すでに遅く、坑道の奥には息絶えた少女が横たわっていた。 冷たくなった少女の手を震えながら握りしめる少年は、誰一人、何一つ、交わした約束を果たせず迎えた終わりと共に、坑内に充満していた魔力を孕んだ鉱石から溢れ出す瘴気が少年の絶望に呼応し、人間とは異なる異形の存在・セレボラへと変貌を遂げる。 契約書が集まってできた羽と鋭い爪を備えた天使のような姿となった彼は、暗澹たる気配を纏いながら世界に君臨するのだった。

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